医療費控除の節税効果

医療費控除は、確定申告をすることで支払った医療費が返ってくるわけではなく、所得から控除される金額が増えることで納め過ぎた税金が還付されるものです。そのため、源泉徴収などで既に納めた税金の1部が返ってくることになります。

年末の源泉徴収票で所得税の金額が多い場合には見込みがありますが、そもそも1円も税金が徴収されていない場合には、いくら高額な治療費がかかっても還付される税金は1円もありません。ただし、非課税の場合でも生計を一にしている家族の医療費は合算できるため、納税額の多い人に領収書を渡して家族単位で節税することができます。

主に会社員の場合は、確定申告(※還付申告)をすることで源泉徴収されていた所得税から還付してもらう形になりますが、個人事業主の場合でも確定申告することで納める所得税を安く済ませることができます。また、所得税に加え、後ほど請求される住民税も安くなります。

医療費控除は年間にかかった医療費について「最大200万円」まで所得から差し引くことができる所得控除のため、青色申告特別控除の65万円などと比較しても控除額は大きいです。

最大200万円

医療費控除の対象となる条件や計算方法については、こちらのページをご参照ください。
医療費控除の計算方法

税率が高いほど有利なため、税率の高い高額所得者で、なおかつ高額な医療費がかかった場合は節税効果が高いといえるでしょう。

平均的なサラリーマンの医療費控除還付金の目安

現在、サラリーマンの平均年収は400万円程度といわれてますが、給与所得でいえば266万円程度になります。この場合、扶養関係にもよりますが、概ね総所得金額等では200万円を超えてくるはずです。

そのため、医療費控除が適用される金額は、年間でかかった医療費の10万円以上の分からとなり、また、この給与所得266万円程度の所得税率は10%程度となるため、「かかった医療費から10万円を差し引いた金額の1割程度」が還付金になるはずです。

後ほど請求される住民税10%の分と合わせても、合計で「かかった医療費から10万円を差し引いた金額の2割程度」の節税になるかと思います。

例えば、仮に歯科治療などで「年間110万円」の医療費がかかり、10万円を差し引いて100万円分を医療費控除として確定申告したとします。この場合、源泉徴収されていた所得税の分から、この100万円の1割にあたる10万円分が還付され、さらにその後に請求される住民税で10%安くなりますので、合計で2割の20万円程度の税金が安くなるイメージです。

ただし、実際には給与所得266万円の人が100万円の医療費を払うことはまずないと思うので、せいぜい数千円ぐらいが還付されて、住民税も数千円安くなるぐらいが一般的かもしれません。おそらく、一般的なサラリーマンの場合、医療費控除で返ってくる金額はほとんどあってないようなものかと思います。

高額所得者の医療費控除は節税効果が高い

一方、名目税率が5割の高額所得者の場合、単純に考えて医療費控除に計上した分の5割は節税できることになります。

例えば、課税所得が1,900万円の人の場合、1,900万円から2,000万円へ100万円の所得を増やしたとしても、所得税4割と住民税1割でその増えた100万円の半分の50万円が税金で消えてしまいます。逆にいえば、医療費控除で100万円分を使って1,900万円から1,800万円へ所得を減らせば、払うべき税金が50万円分軽減されることになります。

同じ100万円の治療費がかかった場合でも、税率の低い人の場合には2割ぐらいの節税効果しかないのに対し、高額納税者の場合は5割程度の節税効果が見込めることになります。

加えて「その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費であること。」が要件となってますので、年度をまたいで分散せず、稼ぎの良い年度に治療を集中させた方が節税効果が高いといえるでしょう。

例えば、セラミックの歯の治療などで100万円をかけようとする場合、稼ぎが良くて税率が高い年度にまとめて治療してしまった方がお得です。セラミックの歯については健康保険のきかない自由診療で美容目的のようにも思えますが、医療費控除は認められています。

もちろん、治療費の100万円は自分の財布から出ていくため、節税目的で100万円を使わずに、素直にそのまま税金を払ってしまった方が手元に残るお金は多くなります。

医療費を使わないに越したことはありませんが、病気で止むを得ず治療費がかかってしまった場合には医療費控除を活用するとよいでしょう。