「合同会社」での会社設立がおすすめ
会社を設立する際、一般的には「株式会社」が思い浮かぶと思いますが、最近は「合同会社」で会社を設立する人も多くなってきました。
資金がない状態で起業する際、外部からの資金調達が必要になるため、そのような場合には「株式会社」で株式を発行して出資者を募り、会社を設立した方がメリットがあるかと思います。
けれども、個人事業での利益が多くなり、税金上の理由で法人成りする場合、ある程度の手元資金や定期的な売上は既にあるはずです。そのような場合には外部からの資金調達は必要ないため、経営の小回りが利く「合同会社」で設立した方がメリットがあります。
合同会社での会社設立までの流れ
会社を設立するには法務局へ登記する必要がありますが、そもそも会社の商号や目的などが決まっていなければ、登記することはできません。そのため、まずは会社のルールを定める定款を作成し、そちらの情報を元に登記する項目をピックアップして法務局へ申請する流れになります。
株式会社の場合、公証役場でこの定款の認証を受ける必要がありますが、合同会社の場合は定款認証の必要がないメリットがあります。
まず、一般的な「株式会社」で会社を設立する際の流れは以下のようになります。
■株式会社の場合
①定款の作成 → ②公証役場による認証 → ③法務局へ設立登記の申請 → 会社完成
このなかで、②公証役場での定款認証については、公証人の手数料で5万円ほどの費用がかかります。また、法務局へ申請する際の謄本の作成でも約2,000円程度の費用がかかります。加えて、紙の定款で作成する場合には印紙代で4万円がかかります。
さらに、実際に③法務局へ設立登記の申請をする際、資本金の額によっても違いますが、登録免許税が最低でも15万円かかります。
首相官邸の資料によると、株式会社の登記に必要な費用は最低でも20万円が必要とのことです。
(※参照:「定款認証の合理化に向けて」内閣官房 日本経済再生総合事務局)
一方、「合同会社」の場合はこの定款認証の必要がありません。
■合同会社の場合
①定款の作成 → ③法務局へ設立登記の申請 → 会社完成
当サイト運営者は「合同会社」で設立しましたので、②の「定款の認証」は必要ありませんでした。また、合同会社の登録免許税は下限15万円ではなく、下限6万円のため、費用を安く済ませることができました。
電子定款もクリアーできれば、印紙代の4万円も必要なくなり、6万円程度でも設立できたかもしれませんが、この電子定款は難易度が高く、ソフトを用意するのにも費用がかかります。そのため、自分で紙の定款を作成して申請しましたが、印紙代や印鑑なども含めて合計11万円程度の費用がかかりました。
実際に合同会社で法務局へ申請をする際、以下の書類を用意して提出することになります。
- 合同会社設立登記申請書の書き方(登録免許税:6万円)
- 法人設立の際の会社印の作成方法(実印:1万円程度)
- 定款の作成方法と記載例(印紙税:4万円、電子定款の場合は不要)
- 会社設立後の届出書の一覧(登記事項証明書:600円程度)
法務局に用意されている様式には、定款の作成例なども掲載されているため、まずは合同会社設立登記申請書の記載例を参考に作成していくことをおすすめします。
法務局での会社設立が完了したのち、税務署や年金事務所、県税事務所、市区町村などへの届出もしておくようにしましょう。
株式会社と合同会社の設立費用を比較
株式会社と合同会社では設立に必要な費用に違いがあります。
会社設立の際には資本金も必要にはなりますが、こちらは法務局などに支払う費用ではなく、会社の資金になるため、このページでは費用には入れていません。
■登録免許税:「15万円」と「6万円」の違い
設立費用のメインとなる登録免許税については、資本金の額にもよりますが、株式会社では最低でも15万円かかるのに対し、合同会社は最低6万円で設立することができます。
さらに、上記のように株式会社の場合は定款を認証してもらう必要があり、公証人に支払う手数料で5万円が必要になりますが、合同会社ではこの定款認証が必要ありません。そのため、単純に会社の設立に関する費用のみで考えれば、合同会社の場合、最低限は登録免許税のみの6万円ですむことになります。
■定款印紙代:4万円
そのほか、電子定款ではなく、紙の定款で作成した場合、その文書に4万円の印紙代がかかります。こちらは会社設立に必要な費用というよりも、作成した課税文書にかかる印紙税のため、定款であれば、株式会社でも合同会社でも税額に違いはありません。
この4万円は定款の原本1通に貼っておくものですが、株式会社の場合は公証人が保存する原本1通に貼る必要があるため、認証を依頼する時点で費用が発生します。合同会社の場合はこの定款認証の必要がなく、また申請時に法務局へ提出する定款にも貼る必要はありませんが、会社に保存しておく原本1通にはあとで自分で貼っておく必要があります。
ただし、いずれの場合でも電子定款の場合、この4万円の印紙税は必要ありません。
そのため、合同会社の場合、仮に法人印を自分で作って資本金を1円にし、電子定款で申請すれば、最低限、登録免許税と証明書代で6万程度でも会社を設立できるかもしれません。
けれども、法人印の作成や電子定款を自分で対応するのは難しく、また資本金1円も現実的ではないため、一般的には10万円程度の費用がかかるものと思います。
合同会社のメリットとデメリット
「株式会社」で外部から出資を受けている場合、経営上の重要な意思決定をする際には株主総会を開いて株主の承認を得る必要が出てくるため、自由な意思決定が妨げられる可能性があります。
一方、合同会社では「出資者と経営者が一体」であるため、出資者でもある経営者の意向のみで意思決定をすることができます。そのため、迅速な経営判断が可能となり、小回りの利く経営をすることができます。
また、株式会社でも合同会社でも法人税の税率については変わりませんが、合同会社の方が設立費用が安く、決算公告の義務がないなどのメリットがあります。
■メリット
- 意思決定が迅速で小回りが利く
- 設立費用が安い
- 定款認証の必要がない
- 決算公告の義務がない
- 役員の任期がない
株式会社で設立した場合でも、大部分の株式を社長が保有し、議決権の51%以上を確保することで「出資者=経営者」となり、この場合は合同会社とほぼ同じことになりますが、上記のような点を考えると合同会社の方がメリットが多いと思います。
一方、デメリットでいえば、以下の点があげられます。
■デメリット
- 合同会社の知名度が低い
- 「社長」ではなく「代表社員」の肩書になる
- ベンチャー企業には不向き
合同会社は知名度が低いため、社会的な認知度はそれほど高くはありません。
某国会議員ユーチューバーが動画で収益を公開していた際、通帳の「グ-グル(ド」が何のことか分からないと言っていましたが、合同会社から振り込みが合った際には「会社名(ド」などと記載されます。国会議員でも知らないわけですから、大部分の人は知らないのが実際のところかと思います。
また、合同会社は取締役などの組織設計は必要ないため、「代表取締役 社長」という肩書ではなく、一般的には「代表社員」となります。この「社員」は出資者の意味のため、一般的な従業員の「正社員」とは意味が違うものの、普通の人は従業員の意味で判断してしまうかもしれません。
会社の「代表」などと名乗っておけば問題ないかと思いますが、このあたりはモヤモヤしてしまうことがあるかもしれません。
加えて、株式を発行できないため、出資を受けて上場を目指すベンチャー企業には不向きです。外部からの出資を受けたい場合、株式会社を選択されることをおすすめします。
そのほか、税金や補助金、給付金関連では、株式会社と何ら変わりはなく、メリットもデメリットもありません。非営利法人であれば、また違ってきますが、合同会社も株式会社も「営利法人」で変わりはないため、税金上で差が出ることはありません。
私たちの身近にある合同会社の例
合同会社の例でいいますと、グローバル企業の日本法人の場合は合同会社で設立されているケースも多いです。以下はいずれもWikipediaからの引用ですが、「グーグル合同会社」や「アマゾンジャパン合同会社」、あるいは「Apple Japan合同会社」など有名企業も多いです。
■合同会社の例:(※Wikipediaから引用)
- 「グーグル合同会社(英: Google Japan LLC)は、Googleの日本法人である。」
- 「Amazon.co.jp(アマゾン シーオージェイピー)は、Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)の日本法人アマゾンジャパン合同会社が運営する日本のECサイトである。」
- 「Apple Japan合同会社(英: Apple Japan, Inc.)は、アップルの日本法人である。」
そのほか、西友も「合同会社 西友」となっていました。
合同会社の英語表記は「LLC」(Limited Liability Company)が多いですが、Godo Kaishaの「GK」となっているケースもあります。「~LLC」や「~GK」の場合は合同会社と考えておくとよいでしょう。
また、銀行振込の場合、株式会社は通帳に「会社名(カ」などと記載されますが、合同会社は「会社名(ド」と記載されます。
当サイトでは合同会社での設立手順などもご紹介していますが、個人事業から法人なりする際には合同会社も検討されてみることをおすすめします。