定款の作成方法と記載例

会社を設立する際、まずは「定款(ていかん)」を作成する必要があります。

この定款は会社のルールを定めた憲法ともいえるものですが、重要な書類になるため、株式会社の場合は正当な手続きにより作成されたことを公証役場で認証してもらう必要があります。公証人による面前での認証を受けることで、作成者本人の意思で作成されたこと直接確認する意味があります。また必ず記載しなければならない項目などもあり、定款が適法に作成されているのかを確認してもらう目的もあります。

合同会社の定款については、認証の必要がない

ただし、合同会社については、この定款を作成する必要はあるものの、認証については必要ないというメリットがあります。そのため、自分で定款を作成することができれば、後は法務局とのやり取りになるため、手軽に会社を設立することができます。

当サイト運営者が自分で作成した定款はこのようなものです。

紙の定款の例

まずは定款で会社の商号や目的、資本金の額などを定め、その決定した項目を「設立登記申請書」で法務局に申請して登記してもらい、会社が成立する流れになります。

実際に定款を作成する際、法務局にテンプレートの様式が用意されていますので、まずはそちらを参考にされるとよいでしょう。

商業・法人登記の申請書様式:法務局

例えば、「合同会社」の場合は持分会社の箇所になりますが、申請書に関する記載例がPDFで公開されています。

設立登記申請書

こちらのPDFには定款の記載例も載っていますので、まずはこちらをダウンロードされることをおすすめします。

定款の記載例

赤字の部分なども注意深く読んでおくことをおすすめします。

合同会社の定款の記載事項の例

こちらも赤字部分に記載されていますが、合同会社の場合、必ず記載しなければならない事項として以下の項目があげられています。

  • (1)目的
  • (2)商号
  • (3)本店の所在地
  • (4)社員の氏名又は名称及び住所
  • (5)社員全員が有限責任社員である旨
  • (6)社員の出資の目的及びその価額又は評価の標準

当サイト運営者もほぼ上記のような記載になりましたが、入社や退社の際の条文などを何個か追加して全13条で作成しました。

商号

まずは、類似した商号(会社名)を登記情報でチェックしましょう。

赤字部分に記載されていますが、「同じ市区町村内」で類似した会社名があっても登記は可能です。ただし、同じオフィスビルなどの「まったく同じ住所」で「同じ名前の会社名」の場合は登記することができません。(※商業登記法 第27条)

ネット上で登記情報を調べるには「登記情報提供サービス」や「登記・供託オンライン申請システム」などのサービスもありますが、有料のため、国税庁の法人番号公表サイトで調べた方がよいかもしれません。

例えば、「東京都千代田区丸の内1丁目」で検索したとします。

法人番号公表サイト

すると2,277件がヒットしましたが、数が多い場合には番地なども追加して絞り込んで検索し、類似した商号がないかチェックすることをおすすめします。

法人番号公表サイトでの検索結果

この類似商号の調査については、同じ住所で同名の会社はまずないはずですが、ネット上までを含めて、まぎわらしい社名がないかはチェックしておきましょう。

同じような社名が既にある場合、法律上の登記の問題はないとしても、ネットで検索した際に既にある会社の方がヒットしてしまい、自社のホームページが2ページ目、3ページ目に埋もれてしまう可能性があります。その場合、ネットからの集客でデメリットになるため、違う社名にした方が無難かと思います。

また、ローマ字(合同会社DMM.comなど)やアラビヤ数字(777株式会社など)の商号は問題ありませんが、使える「記号」についてはかなり限られています。例えば、「&」や「-」は使えるものの、字句を区切る際にのみ使用でき、先頭や末尾には使えないなどの決まりがあります。また、「?」や「!」、「☆」マークは使えません。

商号に記号を用いる際には注意するとよいでしょう。

目的

こちらの項目は業種によって違うため、テンプレートの様式は参考になりません。

ネットで「第2条 当会社は,次の事業を営むことを目的とする。」などと検索してみますと、上場企業の定款が多数ヒットしますので、そのなかから同じような業種、業務内容の会社を選んで文言を参考にすることをおすすめします。

概ね、現在の事業内容に加え、今後、事業をする可能性のある項目を記載し、最後に定型文の「前各号に附帯する一切の事業」と記載しておけばよいでしょう。

本店の所在地

「本店の所在地」については、「当会社は,本店を○県○市に置く。」などのように、最小行政区画の市町村までで留めておくことをおすすめします。いずれ会社の引越をした際、本店移転登記をしなければなりませんが、定款に詳細な住所を記載していた場合には、定款の変更まで必要になってしまいます。

その点、「○県○市」で留めておけば、同じ市内で引越をした場合には定款を変更する必要がありません。

そのほか、記載例を参考にしながら作成していけば、特に難しいことはありません。

作成完了後、合同会社の場合は定款認証の必要はありませんが、1字1句間違いがないように注意して作成するようにしましょう。

契印(けいいん)や捨印の捺印箇所

上記のPDFの記載例などを参考にしてWordなどで作成していくとよいと思いますが、「定款」の表紙なども付け、提出用と会社保存用にA4サイズで2部作成し、ホッチキスで左の箇所を2か所閉じたものが上記の画像になります。

合同会社では認証の必要がないため、法務局への提出用と会社保存用で2部作成しましたが、株式会社の場合は提出用と会社保存用のほか、公証役場保管用などで3部必要になるはずです。

また、ページとページのつなぎ目には契印(けいいん)を押して、ページを追加されて改ざんされることのないようにします。この契印は発起人全員で押しますが、個人の実印で押すのが一般的です。

例えば、当サイト運営者の場合、役員2人の会社で設立しましたので2箇所に契印しております。3人の場合は3箇所などになります。

また、最後のページには発起人の指名の記名と押印する箇所のほか、下あたりに捨印を押しておきます。この捨て印がある場合、訂正可能という意味になります。

これは公証役場などで訂正箇所が発生した際、発起人の人数が多いと訂正印では面倒なためかと思いますが、合同会社の場合は認証は不要ですので、捨印は特に必要ないかもしれません。

会社設立時に作成する会社印(会社の実印)については、「合同会社設立登記申請書」の書類などについては押印する必要があるものの、この定款については押す出番はないかと思います。

「紙の定款」には印紙税で4万円が必要

こちらはまれなケースかと思いますが、業者に依頼しての電子定款ではなく、自分で書類の定款を作成した場合は「4万円」の収入印紙を表紙などに貼っておきましょう。これを貼らないと税務上、問題になります。

領収書や契約書に収入印紙を貼ることがありますが、定款は会社の憲法ともいえる重要な文書のため、高額な印紙税がかかるのだろうと思います。

定款の印紙税は4万円

ただし、国税庁によると、株式会社の定款は公証人が保存するもののみが課税対象になるとのことです。そのため、株式会社では会社が保存している定款には収入印紙を貼ってないものと思います。

一方、公証人の認証を要しない合同会社の場合、定款を数通作成した場合でも、そのうちで会社に保存する原本1通のみが課税対象となり、その他のものは課税されないとのことです。

課税される定款の範囲

つまり、株式会社の場合は公証人が保存する原本に貼り、合同会社の場合は公証人の認証が必要ないため、会社に保存するもの1通に貼ることになります。

そのため、当サイト運営者は法務局への提出用には貼りませんでした。

国税庁の定款(第6号文書)の箇所でも「会社に保存する原本が課税の対象」と書いてますので、合同会社の場合は会社保存の原本にだけ貼っておけばよいかと思います。

6号文書 印紙税

そのため、合同会社の場合、提出用と会社保存用の定款2通を作成し、法務局に提出する分については収入印紙を貼る必要はなく、実際、何も言われずに申請は通ってしまいます。

ただし、登記の際に法務局からは何も言われないとしても、会社に保存する定款の原本には印紙を貼っておかないと後で税務署の調査が入ったときに問題になるため、きちんと貼っておくようにしましょう。

この紙の定款の4万円の収入印紙を貼る位置については、表紙の裏や上部、右上とか、特に決まりはないようなので、消印をして税務調査の際に納税したことを明確にできればよいと思います。

「電子定款」の場合は印紙税の4万円が不要

一方、紙の定款ではなく、電子定款で作成する場合は課税文書にはならないため、印紙代の4万円は必要ありません。そのため、電子定款の場合は費用を安く済ませることができます。

~ 合同会社の場合 ~

紙の定款 電子定款
登録免許税 60,000円 60,000円
印紙税 40,000円 0円
合計 100,000円 60,000円

※合同会社は定款認証の必要なし

ただし、この電子定款はPDF化して電子署名をするなどの必要があるため、自分で対応するには敷居が高いです。そのため、たいていは司法書士に代行してもらって電子定款で提出することになるかと思います。

つまり、自分で紙の定款で作成すれば40,000円の印紙代がかかるのに対し、プロの司法書士に依頼すれば電子定款で対応してもらえるため、この40,000円分が必要なくなります。どのみち自分で対応して紙の定款の印紙代で4万円を払うのなら、その4万円で司法書士に依頼して電子定款で対応してもらった方が楽かもしれません。

当サイト運営者の場合、AdobeのPDF作成ソフトは持っていましたし、電子署名も個人事業の際のe-Taxで何度か経験はありましたので、自分でも電子定款は作成できるとは思ったのですが、そういったレベルとはまた次元の違う難易度があると感じました。

そのため、電子定款は断念して紙の定款で設立したのですが、4万円前後の金額で対応してくれるのでしたら、司法書士に電子定款で代行を依頼してもよかったかなと思います。

定款の作成を代行してもらうには?

この定款の作成や認証のあと、法務局へ法人登記の申請をする必要がありますので、代行を依頼する場合はどこまで依頼するかを検討する必要があります。

当サイト運営者の場合、個人事業でお世話になっていた税理士に全てお任せしたかったのですが、登記の代行は司法書士の独占業務となっているようで、法令上、税理士や行政書士は登記の代行をすることはできないとのことでした。

一方、定款作成の代行については「行政書士」でも可能ですし、行政書士の資格を持った「税理士」でも対応してくれますが、最終的な法務局への設立登記については自分でやるか司法書士に依頼するしかありません。

  • 司法書士 → 〇(定款の作成可・登記の代行可)
  • 行政書士 → △(定款の作成のみ可)
  • 税理士 → △(行政書士の資格がある場合は定款の作成のみ可)
  • 自分 → ◎(定款の作成可・登記可)

もし自分で対応するのが面倒な場合、すべて丸投げするなら「司法書士」、定款の作成だけを依頼するなら「行政書士」に依頼するのがよいと思います。

司法書士に代行してもらう場合、たいていは電子定款でやってもらえるはずですので、定款に貼っておく収入印紙4万円分を節約できるメリットがあります。