営業利益と経常利益、税引前利益の違い
決算書には「売上総利益」や「営業利益」、「経常利益」、「税引前利益」あるいは「純利益」など様々な項目が細かく記載されています。単純に利益といっても、どの段階での利益かによって意味が違ってきます。
たとえ税引前利益では黒字でも税金を払ったら赤字になることもあります。最終的な純利益で黒字にするには、どの段階でいくらの利益を出せばよいのかを把握しておくとよいでしょう。
売上高と売上総利益の違い
売上高から仕入れ原価を引いた利益(粗利)が「売上総利益」になります。従業員の給与などは販売管理費になるため、この段階では考慮に入れません。
売上高 - 仕入れ原価 = 売上総利益(粗利)
■例:花屋さんのケース
売上高:900万円
仕入れ原価:300万円
売上総利益:600万円
また、物を仕入れて販売する業種ではなく、フリーライターやカメラマンなどの仕入れがないサービス業の場合、売上と売上総利益が一致するケースもあります。
原価割れで在庫を処分するケースもあると思いますが、この売上総利益の段階で赤字になることはあまりないはずです。
営業利益と経常利益の違い
商品を販売するには、人件費や広告費などの販売するための「販売管理費」がかかります。これを売上総利益から差し引いたものが「営業利益」になります。
■例:花屋さんのケース
売上総利益:600万円
役員報酬:300万円
アルバイトの人件費:100万円
ちらし代など:100万円
営業利益:100万円
この部分が本業での儲けということになり、銀行で融資を受ける際、この段階での利益があれば印象がよくなります。
さらに本業以外の利益として「営業外収益」があり、これには受け取り利息や配当金などがあります。逆に、銀行からの借り入れ利息は「営業外費用」になります。
これら営業外の利益や損失を営業利益に加えたものが「経常利益」となります。
普通預金の受取利息:3円
経常利益:100万3円
個人会社の場合、法人口座の預金につく利息はごくわずかと思いますので、営業外収益についてはそれほど大きな利益にはならないはずです。そのため、無借金経営の個人会社の場合は営業利益と経常利益がほぼ同じになることが多いかもしれません。
経常利益と税引前利益の違い
大企業では資産の売却やリストラ費用、あるいは不良債権処理などで数千億円規模の特別損益が発生することもあり、それらは臨時的な損失として分けて計上するのが一般的です。
経常利益からこの特別損益を調整したものが「税引前利益」となります。
けれども、法人成りしたばかりの会社でいきなり資産を売却することはないと思いますので、特別損益が発生することはあまりないかもしれません。
経常利益:100万3円
特別利益:0円
税引前利益:100万3円
そのため、個人会社の場合は「経常利益」と「税引前利益」が同じになることが多いと思います。結局、営業利益と経常利益、そして税引前利益がほぼ同じ金額になることが多いかもしれません。
税引前利益と当期純利益の違い
「当期純利益」は、税引前利益から法人税や法人住民税、事業税などの税金を引いた利益です。最終利益や税引後利益などともいわれますが、この部分が会社に残る純粋な儲けになります。
税引前利益:100万3円
法人税:15万円
法人住民税等:15万円
当期純利益:70万3円
確定申告書では別表四の「当期利益又は当期欠損の額」の箇所になります。
この最終的な純利益は株主の配当に充てられることもありますが、個人会社の場合はそのまま会社に残るお金になるはずです。この税引き後の当期利益を内部留保として毎年積み上げていくことで、会社にどんどん体力がついていくことでしょう。
そのため、毎年この当期純利益で黒字にしておくことをオススメします。
税引後の当期純利益で黒字にするには?
事業規模や損金に算入した事業税の金額にもよりますが、法人住民税の均等割りの部分で最低でも「7万円」がかかります。そのため、最終利益で黒字にもっていくには税引前利益の段階で10万円ぐらいの利益がないと赤字になるはずです。
仮に、税引前利益でちょうど7万円の場合、「法人税(約1万円)+法人住民税の均等割り(7万円)」で8万円以上の税金がかかりますので、税引前利益の段階で7万円では純利益で赤字になる可能性が高いです。
損金に処理した事業税の金額にもよりますが、最終的な純利益でも黒字にする場合、税引前利益の段階で10万円ぐらいの黒字になるように目安をたてておくとよいでしょう。