iDeCo(個人型確定拠出年金)とは何か?
国民年金や厚生年金などの公的年金は「積立方式」ではなく、「賦課方式」となっており、現役世代の保険料はそのまま高齢者の年金資金にあてられています。そのため、少子高齢化社会で高齢者の割合が多くなると現役世代の負担は重くなっていきます。
出生数が90万人を割り込んでいる現在、今後も現役世代の負担は重くなっていき、賦課方式の公的年金では将来もらえる年金額はさらに少なくなっていくと予測されています。
そのような状況のなか、賦課方式の公的年金制度では限界が出てきたため、老後の年金は自助努力で自分で積み立てていく方針に変更になってきており、その一環として出てきたのが個人型確定拠出年金の「iDeCo」です。
このiDeCo(イデコ)は「個人型確定拠出年金(individual-type Defined Contribution pension plan)」の愛称ですが、2017年1月から加入対象者が大幅に拡大されています。
基本的に20歳以上60歳未満の全ての方が加入できますが、掛金の限度額に違いがあり、自営業者(第1号被保険者)の方が会社員よりも限度額が多くなっています。
自営業者向けの積立方式の年金には国民年金基金もあり、どちらも掛金を運用するという点では同じではあるものの、iDeCoは国民年金基金のように運用先を全てお任せするのではなく、運用先を自分で決めるという点で違いがあります。
個人事業主にとって「iDeCo」は節税になるか?
自営業の個人事業主の場合、iDeCoは月5,000円からはじめることができ、最大で月68,000円(年間81万6,000円)まで掛金の全額が所得控除の対象となります。国民年金基金とも併用できますが、両方合わせての限度額が月68,000円となるため、所得控除額は最大でも年間81万6,000円となります。
■個人事業主の場合
「iDeCo(個人型確定拠出年金)+ 国民年金基金」= 月68,000円(年間81万6千円)
ただし、小規模企業共済の月額70,000円(年間84万円)の限度枠とは別に併用できますので、両方をフル活用することで合計165万6,000円までが所得控除の対象となります。
「iDeCo+ 国民年金基金」(年間81万6千円)+ 小規模企業共済(年間84万円)
= 年間165万6,000円
仮に課税所得が1,800万円ごえで税率50%の高額所得者の場合、年間82万円程度の節税にはなりますので、税率の高い人にとっては節税効果が高いといえます。
けれども、今までも国民年金基金の限度額で81万6,000円ありましたので、この個人型確定拠出年金のiDeCoが出てきたからといって個人事業主の所得控除額の限度額が増えたわけではありません。加えて、自分で運用する手間や手数料もかかるため、素人が下手にiDeCoで運用するよりも国民年金基金にすべてお任せした方がメリットは大きいものと思われます。
そのため、このiDeCoでメリットを得られるのは、主に新たに加入対象となった企業年金のないサラリーマンや専業主婦ということになるはずです。
ただし、iDeCoの場合、加入年数が10年未満の場合には給付年齢が遅くなってしまいますので、将来的に会社員になった際のことを考え、月5,000円でもiDeCoに加入しておき、加入年数を稼いでおくのもよいかもしれません。
一人会社の社長にとって「iDeCo」は節税になるか?
一方、個人事業から法人成りした場合は厚生年金の加入になりますが、会社に企業年金がない厚生年金の被保険者の場合、iDeCoの掛金の限度額は月23,000円(年額27万6,000円)となっています。小規模企業共済(年間84万円)との併用も可能なため、合計で111万6千円の所得控除が可能になります。
どちらを選択するかでいえば、貸付制度のある小規模企業共済がおすすめですが、余裕があれば併用して積立方式のiDeCoの限度額で月23,000円(年額27万6,000円)の所得控除枠も活用した方がお得かと思います。
単純に税率を30%としましても、年額27万の掛金で8万円程度の節税にはなるはずですので、たとえiDeCoでの運用益がいまいちだったとしても節税分だけでも十分にカバーできるはずです。
加えて、会社経営者は何かとリスクを抱えてしまうケースが多いです。
銀行からの借入に社長個人が連帯保証していたことにより破産してしまうケースもあるかもしれません。そのような場合でも年金については保護されるため、個人事業から法人成りした会社社長の場合はiDeCoに入るメリットはあると思います。
そのため、個人事業主の場合は「国民年金基金+小規模企業共済」をメインに、法人成りした場合は「iDeCo+小規模企業共済」で節税対策するのがおすすめです。
NISAとiDeCoの違い
NISAとiDeCoはともに運用益が非課税となる点では共通しているものの、iDeCoは掛金の全額が所得控除の対象になるのに対しNISAはなりません。仮に税率30%の個人事業主が80万円を掛金に払った場合を考えますと、iDeCoは節税効果で24万円のメリットがありますので、この時点で大きな違いがあります。
一方、iDeCoは原則として掛金を60歳まで引き出せないのに対し、NISAは株を売却すれば数日程度で資金を引き出すことができます。基本的にNISAは投資運用の目的であるのに対し、iDeCoは年金の積立目的という面で大きな違いがあります。
iDeCoは簡単には引き出せない分、確実に年金を積み立てていけるメリットはありますが、手持ち資金に余裕がないと掛金を払えない点、そして税率が高い高額所得者ほど節税効果が高いという点で、一般的なサラリーマンには活用しずらい面があるかと思います。
手持ち資金にあまり余裕のない方は、急な出費にも対応できるNISAで運用した方がいざという時にメリットがあるかと思います。