発生主義と現金主義の違い
一般的に、家計簿やお小遣い帳などは「現金主義」になりますが、実際にお金の出入金があった日付で記帳する簡易的な方法になります。実際にお金のやり取りがあった(実現した)日付で記帳するため、「実現主義」とも呼ばれています。
例えば、12月25日分のお小遣いをもらい忘れていて、翌年の1月10日にもらった場合でも、お小遣い帳の入金日は1月10日の日付で記載するはずです。
けれども、この現金主義はあまり正確な記帳の方法とはいえません。毎月のお小遣い日が25日と決まっている場合、12月分の収入が発生した時点は12月25日となりますので、1月10日分の収入ではなく、前年度の12月25日分の収入で記載するのがより正確な記帳の仕方になります。
このような、現金のやり取りの有無に関わらず、収入や取引の根拠が発生した時点で記帳するのが「発生主義」による記帳の方法です。
上記のお小遣い帳の例の場合、12月25日分のお小遣いは「発生主義」では前年度の収入となりますが、「現金主義」では今年度分の収入となってしまい、どちらを採用するかによって微妙な違いが生じてきます。
お小遣い帳や家計簿なら「現金主義」で記載しても特に問題はありませんが、個人事業の事業所得については収入を計上する年度が違うと、税金も違ってきてしまうため、より正確な簿記である「発生主義」で記帳することが推奨されています。
例えば、商品を掛けで12月25日に販売した場合、売上高を12月25日で計上し、実際に入金があった時点で銀行口座の現金として計上するというやり方になります。ただし、発生主義といっても、会計ソフトを使えば、それほど難しいことはありません。
「65万円の青色申告特別控除」は発生主義による記帳が必要
税務署へ申請して「現金主義による所得計算の特例の適用」を受けている場合、「現金主義」による簡易帳簿で記載することもできますが、この場合は「65万円の青色申告特別控除」を受けることができなくなってしまいます。
現金主義では、最高10万円の控除しか受けることができなくなってしまうため、できるだけ発生主義による正規の複式簿記で記帳することをおすすめします。
現金主義による簡易帳簿だからといって、正規の簿記ではないというわけではありませんが、前々年分の事業所得などの合計額が300万円以下の方などと制限されているため、事業が好調になってきた際や法人成りした際にはどのみち発生主義で記載することになります。
それほど大した違いはありませんし、何より65万円分の青色申告特別控除はかなり大きいため、できるだけ発生主義による記帳をするとよいでしょう。