「年収」は1年間に稼いだ収入の総額のことです。そこから、その収入を得るのに使った経費を際し引いて「所得」となり、さらに税金や社会保険料が差し引かれて実際に手元に残る金額が「手取り」になります。
サラリーマンの場合、自分の時間やスキルを月単位で労働力として会社に売り、その対価として会社から給与収入を得ています。この1年間の給与総額が「年収」にあたります。
一方、個人事業主の場合は年収という言い方はあまりされませんが、サラリーマンと同様、商品やサービスを売って得た1年間の売上の総額がいわゆる「年収」に該当します。ただし、仕入れなどで多額の経費がかかることでサラリーマンの年収とは意味合いが異なるため、「年商」という言い方をされるケースが多いです。
どちらも、商品やサービス、あるいは自分の労働力を売却して得た1年間の収入の総額が年収である点では同じといえます。
給与所得者の場合、源泉徴収票に会社があなたに支払った給与の総額が記載されていますので、「支払金額」の箇所がサラリーマンにとっての年収にあたります。
■サラリーマンの年収
一方、個人事業主の場合、確定申告書の「収入金額等」の箇所が年収にあたります。
■個人事業主の年収
個人事業主の場合、特に小売業においては仕入れ金額がありますし、ほかにも経費がかかりますので、年収である年商が多くても実際に手元に残る金額はまったく違います。1,000万円の売上があったとしても、その仕入れに900万円かかっていたとしたら、手元に残るお金は100万円にしかなりません。
一方、サラリーマンの場合、給与を稼ぐのに必要な経費として「給与所得控除」が設定されてはいるものの、実際に金銭的な支出を伴う経費ではありませんし、自分が会社に提供する労働力には仕入れ金額などもないので経費はほとんどかかりません。
なので、個人事業主とサラリーマンの年収では意味合いがまったく違います。
個人事業主の場合、いくら年収が多くても経費がかかれば赤字になることもあるので、手元に収入がまったく残らないこともあります。一方、サラリーマンの場合、自分が会社に提供する時間や労働力には経費はかからないので、基本的には100%黒字になります。
サラリーマンで年収2,000万円もあれば高額所得者といえますが、個人事業主の場合は実際には赤字になっていてまったく稼ぎがない可能性もあるため、年収である売上が多くても当てにならないことが多いです。
そのため、個人事業主の場合は「年収」や「年商」ではなく、「所得」で判断されることが多いです。例えば、奨学金の審査では親の所得制限がありますが、一般的にサラリーマンの場合は「年収」で判断されるのに対し、自営業の個人事業主は「所得」で判断されるケースが多いです。
ただ、一般の人には「所得」で伝えたとしても通じないため、年収を聞かれた場合には売上高の年商を「年収」としている人も多く、あまり統一されていません。
なので、サラリーマンと個人事業主の年収を比較する場合には、どちらも「所得金額」で統一した上で比較するのが妥当といえます。
「所得」といった場合、事業所得や給与所得などの種類がありますが、主に税金や社会保険料の金額を計算するために使用しますので、税金や社会保険料を支払う前の金額になります。また、単純に所得に税率をかけるのではなく、所得から控除される「所得控除」を差し引いてから計算されますので、最終的な「課税所得」を割り出す前の段階の金額になります。
一方、「手取り」といった場合、主に給与所得者の場合で税金や社会保険料が差し引かれた後の実際に銀行口座に振り込まれる金額のことを指しています。いわゆる「可処分所得」といわれているものですが、消費や貯蓄などに自由に使える金額のことです。
個人事業主の場合、源泉徴収や特別徴収はされていませんので、自分で納付することになりますが、概ね、売上から経費を差し引いて実際に手元に残った金額から、税金や社会保険料などを差し引いた金額が手取り額になります。
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